「この窓は誰かに割られた」と英語で言おうとして、主語を誰にすればいいのか分からず手が止まる。英語の受け身(受動態)は、そういう場面で使う形です。受け身は「動作をした人」ではなく「動作をされたもの」を主語に立てる言い方で、作り方そのものは be動詞+過去分詞の一つだけです。
この記事では、英語の受け身の基本の型、時制ごとの形の変わり方、by を省く条件、by 以外の前置詞を取る決まった表現、第4文型・第5文型の受け身、そして「どんなときに受け身を選ぶのか」までを、一覧表と自作の例文で整理します。
英語の受け身は「be動詞+過去分詞」の一つの型しかない
結論から書きます。英語の受け身は、どの時制であっても be動詞+過去分詞という骨組みで作ります。変わるのは be動詞の形だけで、過去分詞は変わりません。
能動態の文を受け身にする手順は3ステップです。
- 能動態の目的語を、文の先頭に持ってきて主語にする
- 動詞を be動詞+過去分詞に変える(be動詞の時制は元の動詞に合わせる)
- 元の主語を by のあとに置く(必要なときだけ)
例文:Many people read this book.(多くの人がこの本を読む)→ This book is read by many people.(この本は多くの人に読まれている)。目的語だった this book が主語に上がり、read が is read に変わり、元の主語が by many people になりました。
受け身にできるのは、目的語を取る動詞=他動詞だけです。目的語がなければ、先頭に持ってくるものがないからです。happen(起こる)、appear(現れる)、arrive(着く)などの自動詞は受け身にできません。
英語の受け身を時制別の一覧表で確認する
受け身でつまずく最大の原因は、時制が絡んだときに be動詞をどう変えるかが分からなくなることです。ここを表で一度に片づけます。動詞は clean(掃除する)で統一しました。
| 時制 | 受け身の形 | 例文 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 現在 | am / is / are + 過去分詞 | The office is cleaned every day. | 事務所は毎日掃除される |
| 過去 | was / were + 過去分詞 | The office was cleaned yesterday. | 事務所は昨日掃除された |
| 未来 | will be + 過去分詞 | The office will be cleaned tomorrow. | 事務所は明日掃除される |
| 現在進行 | am / is / are being + 過去分詞 | The office is being cleaned now. | 事務所は今掃除されている最中だ |
| 過去進行 | was / were being + 過去分詞 | The office was being cleaned then. | そのとき事務所は掃除されていた |
| 現在完了 | have / has been + 過去分詞 | The office has been cleaned already. | 事務所はもう掃除された |
| 過去完了 | had been + 過去分詞 | The office had been cleaned before we arrived. | 私たちが着く前に掃除されていた |
| 助動詞つき | 助動詞 + be + 過去分詞 | The office must be cleaned today. | 事務所は今日掃除されなければならない |
表を縦に見ると、変化しているのは be の部分だけで、cleaned は最後まで動いていません。受け身を作るときは「be をどう変えるか」だけを考えれば済む、ということです。
否定文と疑問文の作り方
否定文は be動詞の直後に not を入れます。例文:This door is not used.(このドアは使われていません)。助動詞があるときは助動詞の後ろです。例文:It will not be repaired today.
疑問文は be動詞を主語の前に出します。例文:Was this letter written in English?(この手紙は英語で書かれたのですか)。受け身は必ず be動詞を含むので、否定も疑問も be動詞のルールがそのまま使えます。
英語の受け身で by を省略していい場合・してはいけない場合
日本の教室では「受け身には by が付く」と習いますが、実際の英語では by 以下が書かれない文のほうが多数派です。省略するかどうかの判断基準は、動作主の情報に価値があるかどうかの一点です。
by を省略するのが自然な4つの場合
| 場合 | 例文 | 省略する理由 |
|---|---|---|
| 動作主が不明 | My bicycle was stolen last night. | 誰が盗んだか分からない |
| 動作主が一般の人々 | English is spoken in many countries. | 「人々が」は言うまでもない |
| 動作主が文脈で明らか | The patient was operated on at once. | 手術するのは医師だと分かる |
| あえてぼかしたい | A mistake was made in the report. | 誰の責任かを名指ししない |
4つ目は事務連絡や報告書でよく使われる書き方です。受け身は「誰がやったか」を言わずに事実だけを述べられるので、責任の所在をぼかす働きも持っています。この性質を知っていると、英文メールのニュアンスが読み取れるようになります。
by を書いたほうがいい場合
動作主そのものが伝えたい情報のときは、by を残します。例文:This song was written by a high school student.(この曲は高校生によって書かれた)。ここで by 以下を落とすと、文の一番おもしろい部分が消えてしまいます。
判定のコツは、by 以下を隠して読んでみることです。隠しても言いたいことが残るなら省略、残らないなら記載します。
英語の受け身で by 以外の前置詞を使う表現
受け身の形をしていても、後ろに by を取らない決まった言い方があります。これらは感情や状態を表すものが多く、動作というより「そういう状態にある」ことを述べています。
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| be interested in | 〜に興味がある | She is interested in old maps. |
| be surprised at / by | 〜に驚く | We were surprised at the news. |
| be satisfied with | 〜に満足している | He is satisfied with the result. |
| be covered with | 〜でおおわれている | The roof was covered with snow. |
| be filled with | 〜でいっぱいだ | The hall was filled with music. |
| be known to | 〜に知られている | His name is known to everyone here. |
| be known for | 〜で有名だ | The town is known for its pottery. |
| be made of | 〜でできている(材料が見える) | This chair is made of oak. |
| be made from | 〜から作られる(材料が変化する) | Cheese is made from milk. |
| be worried about | 〜を心配している | They were worried about the delay. |
be known to と be known for のように、前置詞が変わると意味も変わる組み合わせがあります。丸暗記ではなく、to は「相手に届く」、for は「その理由で」というイメージで結びつけると忘れにくくなります。
be made of と be made from も同じ考え方です。of は材料が見た目に残っている場合、from は化学的に変わってしまって元が見えない場合に使います。
英語の受け身を第4文型・第5文型から作る
目的語が2つある文や、目的語+補語の文からも受け身は作れます。ここは形が複雑になるので、順を追って確認します。
第4文型(目的語が2つ)の受け身は2通りできる
能動態:My uncle gave me this watch.(叔父が私にこの時計をくれた)
- 人を主語にする:I was given this watch by my uncle.
- モノを主語にする:This watch was given to me by my uncle.
モノを主語にしたときは、残った「人」の前に to や for が必要になります。ここを落として This watch was given me. としてしまうのが定番の誤りです。
なお buy や make のように for を取るタイプの動詞は、モノを主語にした受け身が使われにくく、人を主語にした形もあまり自然になりません。例文:A cake was made for me by my sister. のように for を添えた形が無難です。
第5文型(目的語+補語)の受け身は補語が残る
能動態:They elected her captain.(彼らは彼女をキャプテンに選んだ)→ 受け身:She was elected captain.
目的語だった her が主語に上がり、補語の captain はそのまま後ろに残ります。例文をもう一つ:The room was kept warm all night.(部屋は一晩じゅう暖かく保たれた)。
知覚動詞・使役動詞の受け身は to が現れる
能動態で原形不定詞を取る動詞は、受け身になると to が顔を出します。例文:We saw him leave the building. → He was seen to leave the building./ They made us wait. → We were made to wait.
能動態では消えていた to が、受け身になると復活する。この一点だけ覚えておけば処理できます。ただし let には同じ形がなく、be allowed to で言い換えるのが一般的です。
英語の受け身を選ぶべき場面と、避けたほうがいい場面
受け身は文法的に正しく作れても、使いどころを外すと読みにくい英語になります。判断の目安を整理します。
受け身が向いている場面
- 動作主が不明、または言う必要がないとき
- 説明書・手順書のように、作業そのものが主役のとき
- 研究や報告で、客観的な書き方をしたいとき
- 前の文で話題にしたものを、次の文でも主語に据えて話をつなげたいとき
4つ目は見落とされがちですが実用的です。例文:I bought a secondhand desk. It was made in the 1960s. 2文目を能動態にすると主語が変わってしまい、話の流れが途切れます。
受け身を避けたほうがいい場面
日常会話では、受け身より能動態のほうが短く分かりやすく伝わります。とくに動作主がはっきりしている場面で受け身を使うと、まわりくどく聞こえます。
迷ったら能動態で書き、動作主を言いたくない・言えない理由があるときだけ受け身に切り替えるのが安全です。
①その動詞は目的語を取るか(自動詞は受け身にできない) ②be動詞の時制は元の文と合っているか ③by 以下は書く価値がある情報か。この3点を通せば、形の誤りはほぼ防げます。
英語の受け身についてよくある質問
Q. 英語の受け身と過去形は、見た目が同じで区別できません
区別の鍵は be動詞の有無です。The door closed. は過去形(ドアが閉まった)、The door was closed. は受け身(ドアが閉められた)です。be動詞があれば受け身、なければ能動態の過去形と考えて構いません。規則動詞は過去形と過去分詞が同じ形なので、動詞単体では判別できません。
Q. get を使った受け身もあると聞きました
あります。get + 過去分詞の形で、話し言葉でよく使われます。例文:He got fired.(彼はクビになった)/ My phone got broken.(携帯が壊された)。be を使った受け身より、予期しない出来事や困った出来事を表すニュアンスが出ます。書き言葉では be のほうが標準的です。
Q. 自動詞は本当に受け身にできないのですか
単独ではできません。ただし自動詞+前置詞がひとかたまりで他動詞のように働く場合は、受け身にできます。例文:Someone looked after the cat. → The cat was looked after. この場合、後ろの前置詞 after を落とさずに残すのがポイントです。
Q. 受け身の文に by が2つ出てくることはありますか
あります。片方が動作主を表す by、もう片方が手段や期限を表す by です。例文:The form must be submitted by Friday by the applicant.(申込書は本人が金曜までに提出しなければならない)。読みにくいので、実際には片方を書き換えるか語順を変えるのが普通です。
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